弁護士から見た債務超過M&A

今回は、スペシャルゲストとして片岡弁護士をお招きし、「債務超過のM&A」についてお伺いしました。(インタビュアー 津田敏夫)

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津田

債務超過とは、どのような状況のことをいうのでしょうか?

企業が債務超過の状況にあるとは、企業の負債がその資産を上回っている状態を指します。たとえば、1億円の資産しかないのに、銀行に2億円借りているケースです。企業が借入金や未払いの債務などの負債を返済する能力を失っており、会社を清算しても借入が残ります。

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津田

債務超過企業を売却するのは難しいのでしょうか?

債務超過の企業を買った企業は、買収したとたんに資産を超える債務を負うことになるので、たとえ価格が低くても買い手が躊躇することが多く、売却しづらいのが現状です。M&Aを仲介する業者の立場でみると、資産超過の企業は、会社の株式を買い手に売り渡せば良いだけですが、債務超過の企業の場合、簡単には取引できないほか、手数料も取りにくいことも多いので、敬遠されるのが実情です。なお、決算書類上では資産超過であっても、記載されている在庫がなかったり、計上されている売掛金が実際には回収できなかったりするいわゆる「実質債務超過」の企業も同様です。

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津田

では、どうすれば売却できますか?

債務を整理することです。税金などの滞納がなく、仕入代や、その他の諸払いができていることが前提ですが、大きな債務が銀行借入だけであれば、破産や民事再生を申立てずに、「私的整理」という方法で取引先にも知られることなく債務を減額できます。

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津田

具体的には、どのような方法でしょうか?

一番多く利用されているのは、中小企業活性化協議会という公的機関です。全都道府県に設置されており、金融機関の調整を担ってもらえます。

中小企業活性化協議会とは?
地域のハブとなり、金融機関、民間専門家、各種支援機関と連携し、「地域全体での収益力改善、経営改善、事業再生、再チャレンジの最大化」を追求していいる。
全国の中小企業活性化協議会の窓口はこちら
https://www.smrj.go.jp/supporter/revitalization/01.html

ただ、実際に配分額を計算したり、審査部門と折衝したりするのは、我々弁護士とコンサルタントのみなさんです。費用も時間もかかるので、大切なことは、資金的・時間的な余裕を持って行動することです。

費用は、企業の規模によって異なりますが、最低でも数百万円、多ければ1千万円を超えます。ただし、公的な補助金の制度もあるので、実質的な負担はもう少し抑えられます。また、期間は、半年はみておくべきでしょう。

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津田

逆に、買い手にとって、債務超過の企業を買収するメリットは何でしょうか?

一番大きなメリットは、比較的安く買えることです。通常の資産超過企業の場合、売り手市場となって、競争が起こり、結果的に高い買い物となることが多いと思います。債務超過の企業であっても、債務を削減すれば、普通の企業に生まれ変わります。しかし、その分手間がかかって面倒です。したがって競争にはなりにくく、一般的には買収価格を抑えることができます。

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津田

債務超過の企業を買収する場合に注意することは、何でしょうか?

対象企業の財務状況を評価し、債務の内容や返済能力、資産の価値などを把握することが必要です。そのためには、弁護士や公認会計士などの専門家に依頼することが必要です。リスクを正確に把握することで、将来の負担を予測し、価格や条件を適切に決めることができます。

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津田

片岡先生、お忙しいところ、ありがとうございました。

スペシャルゲスト:片岡牧弁護士のご紹介
金沢大学 薬学部卒。大阪大学大学院 高等司法研究科修了
2009年 弁護士登録(修習62期)堂島法律事務所 入所
2014年 株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)へ出向
2016年 堂島法律事務所へ復帰
専門は、M&A、企業再生、商事、倒産法、会社法務全般。

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